Cattin’
(Mal Waldron)
(7分23秒)
【この曲、この演奏】
マル作のこの曲は、前月に行われたプレスティッジでのジーン・アモンズのセッションで初披露となった曲であります。マルはこの5月のセッション以降も何度かこの曲を演奏していますが、コルトレーンはこのセッションだけの演奏記録です。
ブルースらしいブルースのマル作のテーマを悠然と吹くコルトレーンとクィニシェット、そして続くのが「間のマル」の魅力たっぷりのマルのソロ。そこに続くのがコルトレーンのソロです。固唾を呑んで聴き入ってしまう張りがある演奏です。そしてそれに続くのがクィニシェットのソロですが、これについて資料09には次にように書いてあります。
「次にキニシェのソロがはじまると途端に気分が一転してしまう。決して悪い演奏ではないのだが、あまりにも(それまでの流れと)コンセプトが違うというのが問題だ」
このコメントはよく分かります。でも私には、コルトレーンが副大統領と2テナーの演奏記録が存在していることの意味合いの深さで、この演奏を楽しんでおります。最後にあるテナーによる4小説交換では、副大統領に合わせていくコルトレーンの姿があり、微笑ましい気分になります。
【エピソード、副大統領とコルトレーン】
クィニシェットとコルトレーンの共演記録は、プレスティッジに3回あります。最初が本セッション、2度目が同年9月20日のオールスターズ・セッション、最後が翌年1月のジーン・アモンズでのセッションです。2管での演奏は、本セッションだけです。(資料06)
資料11にこの二人の共演についての次の記述があります。
「これ以上不似合いなペアは想像しろといっても難しい。密な、凝縮されたトーンを好むコルトレーンに対して、ふわっとした音が好きなクイニシェット。いつもハーモニーを考えている”ヴァーティカル”な縦指向のプレイヤーがコルトレーンだと言えば、クイニシェットは、メロディの呪縛に臣従する”ホリゾンタル”な横指向のプレイヤーだし、コルトレーンの基本とする音符は16分音符で、クイニシェットは4分音符ないしは8分音符だ。にも拘わらず、二人は互いに尊敬の念をもってこのセッションに臨んでおり、また、あくまでもそれぞれの音楽アイデンティティに忠実である」
私はうまい解説だと感心しながら、私は大御所と期待の星との「それぞれの音楽アイデンティティに忠実」な演奏を、貴重なものと感服しながら楽しむべきものと思っております。
【ついでにフォト】
2006年 香港
(2019年6月30日掲載)