19650930-12

Lush Life
(Billy Strayhorn)
(9分49秒)



【この曲、この演奏】
 バラードのコルトレーン、ここにあり、それを最初に示したのは、1958年1月10日のプレスティッジでのレコーディングでした。同名のアルバムが1961年春に発売され、ジャズファンにはお馴染みの存在となりました。

 続いてはインパルス!でのレコーディングで歌手のジョニー・ハートマンと共演した、1963年3月7日にこの曲が演奏され、同年に発売されました。

 この曲のライブ演奏となると、この1965年9月30日のシアトルでのものとなります。しかしこれは、2011年にブートレグでの発売のため、知られた存在とは言えないものです。

 さて演奏ですが、コルトレーンがピアノと共に、テナーサックスでテーマをしっとり演奏しています。1分20秒からベースとドラムスも演奏に加わりますが、流れは変わることなく進みますが、2分45秒から風が少し強まっていく感じです。その30秒後にファラオのテナーサックスとなり、これは激しくなっていくのかとの予感がある中で、何とかコルトレーンからの流れを守っていこうとする、少し焦ったいようなファラオの4分間です。

 その後にはドラムスが目立つ中で、微かにコルトレーンのテナーが1分強響いていき、そしてクロージングとなっていきます。




【エピソード、ノルウェーのジャーナリスト、ランディ・ハルティンの著書から その6】
 セシル・テイラーの話題が出たところで、私は今、ヨーロッパで耳目を集めているこの現代音楽的ピアニストから、つい最近、一通の手紙を受け取ったことを告げた。「どうぞ読んでみてください。私的な手紙ですが、万人に向けて書かれているので。彼は一年前(1962年)にオスロを訪れたんですが、北欧はその時が初めてだったとか。あの方の言い回しはちょっと分かりにくいところがあって。手紙は誰かに書いてもらったんでしょう」

 セシルの手紙は、一枚の便箋を線で四つの枠に区切ったものが四枚、合計で十六ページあった。コルトレーンは熱心に目を通した。

 「確かに興味深い考え方だ。とても知的な手紙だよ。見せていただいてありがとう。セシルのことがよく分かった。彼のコンサートは聴くたびに新鮮な気分になれる。ただ、実際に会って話をしたことはなくてね(1958年10月13日にセシルとコルトレーンはレコーディングで共演している)。彼の音楽が好きなんだ」

 コルトレーンの話は熱を帯びてきたが、私は、そろそろ会話を切り上げるべきだと思った。少し休まなければ。彼はこのあとコンサートを控えているのだ。

 「幕間に、控室に来てくれるかな?」とコルトレーンは言った。
「ええ、喜んで。それとも差し支えなければ、コンサートのあと、みなさんを我が家にご招待しますは」

ランディ・ハルティン著「Born Under The Sign Of Jazz(ジャズの星の下に生まれて)」(London: Sanctuary, 1998, 2000)’ 157-162ページより (資料04)

収録アルバム

【ついでにフォト】

2012年 ペナン、マレーシア

(2023年3月17日掲載)