One Down, One Up
(John Coltrane)
(28分37秒)
【この曲、この演奏】
「One Down, One Up」あるいは「One Up, One Down」とクレジットされるコルトレーン作のこの曲ですが、インパルス!では4回のレコーディング記録があります。
1963年3月26日
スタジオ録音であり5回演奏されました。この日の演奏は全てお蔵入りとなり、2018年になってようやくVerve/Impulse! からアルバム「The Lost Album」として発売され、この曲の二つのテイクが収録されました。
1965年3月28日
ヴィレッジ・ゲイトで行われたリロイ・ジョーンズ主催のライブで、コルトレーンはこの曲を演奏し、それが発売されたのは2002年のことでした。
1965年5月26日
スタジオ収録が行われ、この曲が演奏されましたが、1970年発売のアルバム「Transition」には収録されませんでした。この演奏が発売されたのは1977年のことでした。
1965年7月2日
ニューポート・ジャズ・フェスティヴァルに出演し、この曲が演奏され、アルバム「New Thing at Newport」に収録され1966年に発売されました。
インパルス!が公式に4回の録音を残したこの曲ですが、3回はお蔵入りとなり、最後のニューポートのライブ演奏だけがその時点で発売されていました。
さてこのハーフノートでの演奏は、1965年にコルトレーンが再びこの曲の演奏に挑み出した最初のものとなります。
さて3月26日のハーフノートでの演奏ですが、ギャリソンのピッチカートに乗って、Alan Grantがメンバー紹介を30秒ほど行なっています。その喋りが終わってもベース演奏は続いておりますので、この曲の演奏時間はそこからカウントしています。
この1分強のベースソロの後にエルヴィンが加わり30秒弱演奏し、コルトレーンとマッコイが加わりテーマとなります。コルトレーンはここから終了まで27分ほどを、テナーサックスで吹き続けています。テーマが気がつけばアドリブとなり、さらにはマッコイとギャリソンが抜けて、コルトレーンとエルヴィンのデュオとなっています。そこでの激しい演奏は、人間が落ち着いた心を得るまでの、人生の浮き沈みを描いているようです。
演奏は最後の50秒ほどでマッコイとギャリソンが戻りテーマとなって、終わっていきます。
この2日後には、インパルス!がレコーディングを行う、ヴィレッジ・ゲイトでのイヴェントが控えています。そこへ向けてコルトレーンは、このハーフノートで確かな手応えを感じたことでしょう。
【エピソード、この日の音源発売】
コルトレーンが1965年3月19日から4月4日にハーフノートに出演し、FM局が3月19日・3月26日・4月2日の三日間を放送し、その中の3月19日の演奏が1980年前後にブートレグ発売された。
4月2日の演奏はエアチェック私家録音の存在は確認されており、その中の1曲がブートレグ発売されたとの情報があるものの、入手が難しいものである。
3月26日の演奏が2005年になって発売された。しかもインパルス!からの公式発売であった。ラヴィ・コルトレーンがクローゼットに収納されていたテープ群の中から、この3月26日ハーフノートを見つけ出したとのことだ。
【ついでにフォト】
2004年 香港
(2023年3月11日掲載)