19581013-01

Shifting Down
(Kenny Dorham)
(10分38秒)



【この曲、この演奏】
 ケニー・ドーハム作のこのブルース・ナンバー、コルトレーンの演奏記録は本セッションだけです。

 その演奏ですが、セシルらしいピアノ演奏で入りますが、すぐに2管がテーマを吹き始めるとハード・バップの世界に変わっていきます。

 ソロの先発はコルトレーンであくまでこの時期の彼らしい演奏であり、これにセシルが自分の思いでピアノをぶつけていく姿が、興味深いものです。続くソロはセシルで、それまでの流れからセシルの世界になっています。そしてオレはオレだよとのドーハムのソロとなり、ここではセシルは流れに合わせた演奏となっています。

 この3人のソロを聴くだけで、このセッションに統一性がないことが分かります。

 この後にベース・ソロとなり、テーマとなって、演奏は終わります。

 良い内容とはいえませんが、非常に興味深く貴重なセッションの最初の演奏でした。




【エピソード、本セッションについて】
 各資料を眺めても、このセッションが企画された背景についての明確な情報はない。

 プロデユーサーは Tom Wilson であり、これはアルバムにクレジットされている。このトム・ウィルソンはやがて大物プロデューサーとなっていくが、本セッションの時点ではユナイテッド・アーティストに採用されて1年が経った時期であった。

 ジャズとの範囲でトム・ウィルソンを語るならば、やはりトランジション・レコードであろう。大学卒業後に900ドルを借りてマサチューセッツ州ケンブリッジに設立したトランジション・レコード(ウィキペディアより)は、多くの弱小レーベル同様に長続きはしなかった。しかし発売された作品のレベルの高さから、70年近く経つ今日でも幾つものアルバムが常に発売されている。

 そのトランジシィンのカタログの中に、セシル・テイラーの作品が一つある。彼の初リーダー・アルバムである「ジャズ・アドヴァンス」である。セシルの個性を発揮している作品であり、その意味ではトム・ウィルソンはセシルの良き理解者だと思う。

 別項で触れるが、このセッションはセシルの個性を生かした企画とは言えない。トム・ウィルソンの意図を知りたく私は各資料を読み返したが、その情報は得られなかった。

収録アルバム

【ついでにフォト】

2013年 みなとみらい

(2022年6月16日掲載)