All of You (take 1)
(Cole Porter)
(7分28秒)
【この曲、この演奏】
資料14ではこの曲を、「グレタ・ガルボ主演の映画 ニノチカ をミュージカル化した 絹の靴下(1955)に使われた」と紹介しています。この有名スタンダードは歌手ではエラやサラ、ビリーやアニタなど、多くの方のものが残されています。インストでも人気のこの曲には、MJQやバレル、エヴァンスにキースなどの名演が有名ですが、その中で群を抜いて有名なのが、このマイルスの演奏でしょう。
この曲のコルトレーンの演奏記録ですが、スタジオ録音では本セッションだけです。ライブにおいても資料07に記載がある演奏は、全てマイルス・バンドでのものです。1957年冬から春にかけてのライブ、さらに1960年まで毎年この曲をマイルス・バンドで演奏していました。そのライブ演奏ですが、ブートではいくつか発売されていますが、公式発売はありません。
さて演奏ですが、マイルスがテーマを奏でて演奏が始まります。コルトレーンがここでは絡みません。マイルスは引き続きソロに移りますが、テーマからソロまでの演奏にこの曲を手探りで演奏している感じがあります。続くコルトレーンのソロは、このアルバム「ラウンド・アバウト・ミッドナイト」セッションの前2回と比べると、足が地にしっかりと付いているかの安定感があります。続いてキラメキのガーランドのソロとなり、マイルスがテーマを吹いて演奏は終わっていきます。マイルスはこの曲の表現をさらに豊かに出来ると、このテイク1演奏後に感じたのでしょう。
このテイク1は没テイクとなり、2000年になって世に出ました。
【エピソード、本セッション】
マイルスがコロンビア移籍第一弾アルバム制作のために、1955年10月26日、1956年6月5日と行ってきたスタジオ・ワークは、この1956年9月10日で最後となる。
コルトレーンのスタジオ・ワークを見ると、1956年6月5日のセッションの後には1956年9月7日にプレスティッジ・オール・スターズでの「テナー・コンクレイブ」を行っている。それは管楽器奏者が4人参加している、賑やかでリラックスしたハード・バップ・セッションだった。それから三日後に緊張のマイルス・セッションにコルトレーンは臨んだのであった。
このセッションでは3曲が演奏され、「All of You」と「’Round Midnight」がアルバム「ラウンド・アバウト・ミッドナイト」に収録された。
【ついでにフォト】
2009年 みなとみらい、ラ・マシンによるクモ
(2021年12月24日掲載)