Number One
(John Coltrane)
(11分53秒)
【この曲、この演奏】
この曲の演奏記録ですが、明確な記録が残っているのは本セッションだけです。(資料07)
さて演奏ですが、四人全員で始まります。コルトレーンは迷走している自分を戒めるような、落ち着きがありながらも暴走しそうな危うやさも含みながらの演奏になっています。カルテットのまとまりの良さを感じるものです。
4分過ぎあたりでアリスのピアノが強まり、コルトレーンのテナーが一気に熱を帯びていきます。この熱気のまま、何かの啓示が降りたかのように、12分ほどの演奏が終わっていきます。
コルトレーンが目指してきた新たな道のりの成果がここにあり、1967年に発売されなかったことを不思議に思いながら、10年以上遅れても世に出たことを感謝する、そんな気持ちになる演奏でした。
【エピソード、本セッション】
コルトレーンは2月22日にラシッド・アリとのデュオ・セッションを行い、この2月27日には(ほぼ)カルテットでのスタジオ・セッションを行いました。「ほぼ」としたのは、マリオン・ブラウンがスタジオにいましたが、サックスを演奏することはなく、いくつかのベルを振ったとのことです。ブラウン自身が1993年2月17日に資料07の執筆陣に宛てた手紙に、「リスナーとしてスタジオにいた」と書いてあったとのことです。(資料07)
さて本セッションの演奏リストをみれば明らかですが、曲としては2曲の演奏でした。その2曲以外はドラムやベース、そしてピアノの手馴しのようなものなのでしょう。
最初に演奏された「Number One」は1979年に、最後に演奏された「Ogunde」は1967年に発売されました。
さてこの後のコルトレーンのスタジオ・セッションですが、3月29日と5月17日にヴァン・ゲル・スタジオで行われました。3月29日はカルテットで、5月17日はファラオ・サンダースに打楽器奏者を加えたシクステットでの演奏でした。しかしこの二日間の演奏は今に至るまで発売されたことがありません。
その意味では、この3月7日のセッションが、我々が接することができるコルトレーン最後のスタジオ・セッションといえます。
【ついでにフォト】
2007年 ロッテルダム、オランダ
(2021年11月12日掲載)