Mars
(John Coltrane)
(10分42秒)
【この曲、この演奏】
この曲名での演奏記録は、本セッションだけです。
この演奏は攻撃的な二人のぶつかり合いとなっています。コルトレーンの鈴から演奏が始まり、アリのドラムスが加わって、まずは雰囲気作りとなっています。30秒あたりからコルトレーンはテナー・サックスを手にして、アリのドラムスと壮絶な一騎打ちを始めます。すべてがアドリブのような演奏ですが、3分ほどのところで、これがひょっとしたらテーマなのかなと感じる部分があります。
いつもの壮絶攻撃型コルトレーンに対して、アリもいつもの音数で反応していますが、私にはアリは相当硬くなっているなと感じます。そのアリが、演奏開始から7分ほどの辺りで、いつもの調子が、1週間前の感じが戻ってきています。
8分ほどからドラム・ソロとなり、コルトレーンは時折微かに鈴を慣らし、これが2分半続いて演奏は終わりを迎えます。
続けて私の想像を言えば、コルトレーンが硬かったアリがいつもの調子に戻ってて、更にコルトレーンの仕掛けに反応していったので、ここぞとばかりに目配せでアリに独奏を指示した感があります。
こんな想像を掻き立てさせる後半の演奏でした。
【エピソード、本セッション】
数多くの自身のスタジオ・セッションを行ってきたコルトレーンだが、全編でデュオ演奏というのは、本セッションだけである。その相手はドラムスのラシッド・アリであるが、これは1週間前のセッションでのコルトレーンとアリの演奏のぶつかり合いを考えれば、特段に奇異に映る物でなない。というよりも、自然の流れの感じがする。
資料03には、次の記述がある。
「インターステラー・スペース」は異色のアルバムである。これはすべてラシッド・アリとのデュエットによる曲からなっている。サックスとドラムスだけによる苛烈な演奏は、これまでも「クレッセント」「トランジション」といったアルバムや、ハーフ・ノートでのライブ(そしておそらく、その他さまざまなクラブに出演した際にも)部分的に聴くことができた。しかし、すべてデュエットで演奏したコンサートやアルバムはそれまでになかった。これはライブ演奏ではなく、目に前にいるリスナーの気持ちを高揚させようとする性質のものではない。心の平安を誘う音楽である。
【ついでにフォト】
2011年 タイプーサム、ペナン、マレーシア
(2021年10月23日掲載)