A Love Supreme, Part3, Pursuance
(John Coltrane)
(-04 6分23秒、-05 15分27秒)
【この曲、この演奏】
パート2「決意」の後にエルヴィンのドラムスによる間奏が、6分以上続きます。それは壮絶なものながらも景色が浮かんでくる演奏です。
コルトレーンがテーマを短く吹いてパート3「追及」が始まり、すぐにファラオのソロとなります。前のPart2で外されたことを恨んでいるのかのように、俺の存在を感じろ、とばかりの爆発ソロが5分間続きます。続いて登場するのはマッコイのソロで、これは何と9分超えのものです。ファラオのソロの後半ではお休みだったマッコイですが、速さだったら負けないぞとばかりに畳み掛ける演奏です。コルトレーン抜きで考えたらば、ファラオからマッコイへとソロが続くこの場面が、この日のハイライトと言えるのでしょう。
マッコイのソロの終盤にはテーマらしき雰囲気が登場し、そしてコルトレーンが短くテーマを吹いてパート3「追及」は終わり、次へと続いていきます。
なおブックレットにアルバム「至上の愛」とここでのパート3の演奏速度の違いが書かれています。オリジナルは約267bpm、このライブでは約314bpm、ピークでは340bpmとのことです。
【エピソード、録音テープについて その1】
アルバム「A Love Supreme, Live In Seattle」のブックレットに Kevin Reeves による「Engineer’s Note」との文章があるので、そこから引用する。
今回、演奏が録音された5本の7インチリールの1/4インチテープは、シアトルの Electricraft という家電量販店で購入されたもので(おそらく生テープのストックから自社ブランド製品として作られ、販売されたものだと思われる)、1960年代半ばに米国で製造された他のアセテート系磁気記録テープ同様、1950年代の Scotch社製品の”ダークチョコのような濃い茶色”ではなく、”コーヒークリームのような薄茶”をしている。この時代のテープは、長年にわたる熱や湿気の影響や、保管の際に積み重ねられていたことで、経年劣化していることが多い。もう一つは再生のしすぎだ。この時代のテープ再生機のテープ・トランスポートは、この種の薄いテープには優しくないため、フラッターやドロップアウトなど、音声情報に歪みを生じさせる原因となっていた。驚くべきことに、今回のテープは非常に良い状態にあった。脆くもなく、しわもない。頻雑に再生されることなく、熱や湿気を避け、適切に保管されていた。
ペントハウスでの録音は、ステージ上の2本のマイクを、4トラック録音ができる AMPEX社オープンリール録音機に繋いだだけの、ごくシンプルなものだったとこれまでも聞いていた。今回もそのシステムによって録音されたことが、残された証拠から裏付けられる。左右のチャンネルを別々に聴くと、2本のマイクは少なくとも6フィート(約1.5m)の間隔で置かれており、1本はピアノの近く、もう1本はサックス等、ステージ前に立つ楽器の近くだ。2チャンネル間で音漏れが多くあったことが、効果的でバランスの取れたステレオ・サウンドにつながった。エルヴィン・ジョーンズは両チャンネルで大きな存在感を示している。
サックスは小さくドラムスは大きく録音されており、バランスの悪さを恨んでしまうが、このような録音物の場合には聴けること自体が貴重であり重要なことなのだ。この技師のように、大きな気持ちで本作を堪能すべきなのである。
【ついでにフォト】
2006年 香港 維多利亞港 遊艇航行
(2021年10月31日掲載)