Dearly Beloved
(John Coltrane)
(スタジオ内の会話 14秒、演奏 6分11秒)
【この曲、この演奏】
コルトレーン作のこの曲の演奏記録は、本セッションだけです。
曲名の意味は「最愛の人」との意味でもあるでしょうし、辞書によれば儀式での牧師の呼びかけの言葉で、「皆さん・・・」との意味とのことです。
さて演奏ですが、まずはスタジオ内の会話、コルトレーンのメンバーへの指示があります。「キープ」とコルトレーンは何度もいています。
続いてはお祈りの演奏、コルトレーンのテナー・サックスでの静かなる訴えが始まります。メンバーはコルトレーンのサックスに心を合わせた演奏となっています。気脈が通じた仲間だからこその演奏が、ここにあります。堅実なギャリソン、静かに激しくとコルトレーンに誘い水を出すエルヴィン、そして魔性のソロを聴かせるマッコイ、素敵なものです。
さてこの曲ですが、フォルススタートやブレイクダウンを含めて、このセッションで4回試みました。ここで聞けるスタジオ内の会話はテイク2の前のもの、そしてこの演奏自体はテイク4です。つまりつなぎ合わせでこの曲は、AS-9211「Sun Ship」に収録されました。
【エピソード、本セッション】
黄金カルテットでのスタジオ録音ですが、翌9月の2回で終わりとなります。
本セッションで演奏された5曲は、そのままで一枚のアルバムとなり、AS-9211「Sun Ship」として発売された。このアルバムを作るため、との意味合いで見るならば、本セッションが黄金カルテットとしての最後になる。
ただ「Sun Ship」の発売は1971年であり、この時期ですのでコルトレーンの作品発表にはアリス・コルトレーンを絡ませる必要があり、アルバムに「Prepared for release by Alice Coltrane and Ed Michel」とクレジットされている。これを考えると、このセッションの時点でコルトレーンが、1枚のアルバムを作るため、との意識があったかは定かではない。
プレスティッジ時代はルディ・ヴァン・ゲルダーのスタジオで、ヴァン・ゲルダーが録音技師となって、コルトレーンはレコーディングを行ってきた。アトランティック時代はアトランティックのスタジオで、トム・ダウドを中心とした録音技師のもとで、コルトレーンはレコーディングを行ってきた。そしてインパルス!時代は再びヴァン・ゲルダーのスタジオでヴァン・ゲルダーの手によるレコーディングに戻ったのであった。それは1961年11月のヴィレッジ・ヴァンガードでのライブ録音でさえ、ヴァン・ゲルダーの手によるものであった。それが本セッションでは録音場所が RCA Victor Studios となっている。この理由については、どの資料にも見当たらない。
このセッションの全テイクが収録されたCD2枚組が、2013年に発売された。
【ついでにフォト】
2013年 みなとみらい
(2021年7月26日掲載)