Autumn Serenade
(S.Gallop – P.Derose)
(4分21秒)
【この曲、この演奏】
有名曲を並べた本セッションの中にあってこの曲は、本当に地味な曲です。資料14には掲載がなく、また資料09でも曲の出所については記述がなく、「一転してルンバ調の曲である。このセッションにあって唯一モード風のアプローチによる演奏である」と書かれています。
15回の演奏となっており、採用されたのは最後のテイクです。資料07の記載を見ますと、最後まで演奏されたのも、この最後のテイクだけのようです。
セレナーデとは、ウィキペディアによれば「一般的な言葉としては、恋人の為に窓下などで演奏される楽曲、あるいはそのような情景」のことです。これを意識してこの演奏を聴くと、真摯に愛を語るハートマンに対して、様々な理屈を繰り広げるコルトレーンといった感じです。愛しい女性を前にすると、ハートマンの圧勝といえる内容です。私もハートマンのようだったならばと彼の歌に感心しながら、人間っぽいコルトレーンに自分を重ねていました。
【エピソード、バーバラ・ガードナーの記事 その10】
「ジョンは人類史上、もっとも偉大なミュージシャンの一人だ。独創的でありながら、音楽的に難しい判断もできるという稀有な存在だ」とアダレイは言う。「難しい判断と言ったが、彼の頭の中には、まさに百花繚乱といった趣でプレイしたいことが詰まっている。だが、彼はプレイする前にそれらを検討し、この幅広い選択の中から瞬間的に最善のチョイスをすることができるんだよ。ソロイストとしても素晴らしいが、同時に、極めて独創的な万能ミュージシャンでもあるんだ。彼のコンセプトは誰とも似ていない」
「彼の影響力は絶大だ。今後の若いテナー奏者たちは、彼の影響下から逃れられない。断言していい。彼は革新者だ。ただし、例えば過去にいた何人かのように、コールマン・ホーキンス的なテナー奏法から過激に逸脱したわけではない。彼には確立したスタイルがある。チャーリー・パーカー、デクスター・ゴードン、レスター・ヤングを軸に、さらにコールマン・ホーキンスを少しまぶしたようなスタイルだ。そして、こうした現在のジャズ・プレイヤーの中でもっとも成功した一人でありながら、ジョンは突然、強く思ったんだ。自分はまだまだうまくなれるとね」
(資料04より)
【ついでにフォト】
2009年 みなとみらい ラ・マシンによるラ・プランセス
(2021年4月22日掲載)