The Inchworm
(Frank Loesser)
(6分15秒)
【この曲、この演奏】
この曲は1952年の映画「ハンス・クリスチャン・アンデルセン」の挿入歌で、何人もの歌手の方が取り上げている曲とのことです。ジャズのインストとなりますと、これを演奏したジャズマンは少なく、コルトレーンの専売特許のような存在となる曲です。
コルトレーンはこの曲を、この年の2月にライブで取り上げています。そしてこの年の11月からの黄金カルテットでの欧州ツアーでは、この曲は重要なレパートリーとなっていました。資料07にあるだけでも10回の演奏記録があり、その中にはパブロから発売されたものもあります。そしてその後にアメリカに戻ってからも、この曲の演奏記録が見受けられます。
さて演奏ですが、ユーモア漂うこの曲を生かした演奏から、場面場面でこの曲を分解組み立てしていき、ソプラノサックスでの可能性を探求していく内容になっています。愉快さと刺激を楽しみながら聴け、今後のコルトレーン・バンドの発展がこの演奏からうかがえます。バックでも各メンバーの試みを聴くことができます。
この後のライブでこの曲は、この演奏で得られた可能性を深く追求していくことになり、ライブでのこの曲の演奏時間は長いものになっていくのです。
【エピソード、本セッション、気合の初日】
前年5月からインパルス!での活動を始めたコルトレーンは、ドルフィーとの蜜月を終え、このセッションからカルテットでの活動を中心にしていく。ベース奏者がこのセッションからジミー・ギャリソンに固定されていくので、この日を黄金カルテットの始まりと考えもよい。
アトランティックでコルトレーンは構想を練り、そして何日もスタジオに入り、名盤「ジャイアント・ステップス」を完成させた。それをコルトレーンはインパルス!でも実践することになる。
ようやく理想のカルテットに辿り着いたと考えたコルトレーンは、この日から名盤「(インパルスの)コルトレーン」の制作に取り掛かるのである。それは6月の19日・20日・29日と、この日の他に三日間を要している。さらには録音が公開されたことはないが、この日の翌日の4月12日にもスタジオに入っている。
その意気込みが感じられる初日の内容である。
【ついでにフォト】
2013年 ペナン島
(2021年2月17日掲載)