19611101-03

Chasin’ The Trane
(John Coltrane)
(9分52秒)



【この曲、この演奏】
 この曲名の由来は資料09によれば、「ヴァン・ゲルダーがコルトレーンをマイクで追いかける様子に、パーカーの高名な曲名(Chasin’ The Bird)をひっかけたブルース」だとあります。
 この「Chasin’ The Trane」は「F blues」で、「Chasin’ Another Trane」は「B-flat blues」であり、曲としては同じものです。(資料07)

 このヴィレッジ・ヴァンガード四日間では、この両曲名は三回演奏されています。資料07でこの曲の演奏記録をみますと、この後に行われた欧州楽旅での演奏記録は無いようです。黄金カルテットでの1962年11月・12月、そして1963年10月・11月の楽旅で何度かの演奏記録が残っています。そして不確か情報として資料07では、1965年2月・3月のライブでも、この曲が演奏されているようだと伝えています。

 このヴィレッジ・ヴァンガード初日のこの曲の演奏メンバーは、次の通りです。
John Coltrane(ts)
Eric Dolphy(as)
Reggie Workman(b)
Elvin Jones(d)

 ピアノレス・カルテットでの演奏になっています。なお資料07の共同編者であるChris DeVitoは、ここでのベース奏者はジミー・ギャリソンであると考えているようです。

 さて演奏ですが、アップテンポのこの曲を、冒頭からコルトレーンがテナー・サックスで飛ばしています。一応はテーマを吹いていますが、最初からアドリブのようで5分間吹き続けます。続くアルト・サックスのドルフィーは、3分弱のソロをとっています。重厚で考え込むコルトレーンと、軽快に遊び心交えてのドルフィーの対照が印象的です。この後、コルトレーンが再び2分弱のソロをとり、エンディングとなります。

 この演奏は、1977年に世に出ました。




【エピソード、本セッションの不確かな点】
 本セッションの記録に関し、資料07では調査結果として次の点を指摘している。

  1. ベース奏者について
     二人のベース奏者が参加している四日間であるため、どちらが演奏しているのかについての記録には不確かなところがある。資料07ではアルバム記載と異なる見解を示しているところがあり、この「今日のコルトレーン」では資料07の見解を採用している。
  2. Ahmed Abdul-Malikの使用楽器
     従来はマリクは、oud(a Middle Eastern plucked melody instrument)を使用とのことだが、資料07ではtamboura(an Indian drone instrument)を使っているとしている。
  3. Garvin Bushellの使用楽器
     二日目と四日目に参加しているブシェルは従来、oboeとcontrabassoonを使用しているとのことだが、資料07ではoboeではなくEnglish hornを使っているとしている。

 この他にも私には次の疑問点があるが、各資料にその説明は見つからない。

  1. 四日目の録音はなぜ2曲のなのか
     7曲、7曲、そして6曲を録音しているのだが、最終日は2曲だけである。客を入れての演奏であるので、他の日と同様な曲数を演奏していたはずなので、疑問が残る。
  2. 二日目の最初の演奏はなぜかロイ・ヘインズ
     二日目の最初に「Chasin’ Another Trane」が演奏されているが、なぜだかドラム奏者はロイ・ヘインズである。「エルヴィンの遅刻」と考えれば、エルヴィンのことだからと、うなずくこともできる。しかしながら大掛かりなライブ・レコーディングで、1曲だけ遅刻しましたはなかなか納得できないものだ。
初収録アルバム
収録アルバム
収録アルバム

【ついでにフォト】

2013年 みなとみらい

(2021年1月13日掲載)