19611101-02

India
(John Coltrane)
(10分33秒)



【この曲、この演奏】
 伝説のヴィレッジ・ヴァンガード四日間の幕開けですが、いきなりフォルス・スタートから始まりました。気を取り直してのこのテイクが、事実上の最初の演奏になります。(資料07)

 コルトレーン作のこの曲ですが、この時期のコルトレーンの特徴であるインドや中近東の影響が強く出ているものです。資料09には「コルトレーンのエスニカルな要素へのアプローチが如実に表れた曲である。インドよりむしろ中近東の音楽の旋律を感じる」とあり、この曲の特徴を書いています。

 この曲はヴィレッジ・ヴァンガード四日間で毎日演奏された二曲の一つであり、その最初の演奏メンバーと使用楽器は次の通りです。
John Coltrane(ss)
Eric Dolphy(bcl)
McCoy Tyner(p)
Jimmy Garrison(b)
Reggie Workman(b)
Elvin Jones(d)
Ahmed Abdul-Malik(tamboura)

 ソプラノのコルトレーン、バスクラのドルフィー、ベースが二本、そしてアーマッド・アブドゥル・マリクのタンブーラが加わっています。

 さて演奏ですが、テーマではベースのピッツィカートとマリクのタンブーラの持続音で独特の雰囲気を作っている中で、コルトレーンとドルフィーがこの曲を印象付け演奏を行なっています。コルトレーンの短いソロを挟みながらのこのテーマが終わると、3分強のコルトレーンのソロに移ります。スピードの変化をつけながらのソロでは、エルヴィンのドラムが力を増していきます。続いてはドルフィーの2分半ほどのソロに移りますが、バスクラの特徴を生かしたウネリを効果的に用いて、最初からスピード全開であります。この後に再びコルトレーンの2分ほどのソロとなるのですが、ここではドルフィーに触発されたコルトレーンがおります。そして後テーマとなり、最初の演奏を終えていきます。

 ソロの機会がないマッコイのピアノは、バッキングにおいても静かな演奏となっています。これを含めて手探りの演奏というのが、この演奏が日の目を見るまで36年かかった理由なのでしょうけれど、ヴィレッジ・ヴァンガード四日間最初の演奏として楽しめるものであると同時に、貴重な演奏と言えます。




【エピソード、本セッションまで】
 コルトレーンの最初の公式ライブ・レコーディングである本セッションは、事実上の黄金カルテットにドルフィーが参加して、ヴィレッジ・ヴァンガードで四日間に渡り、録音が行われた。

 この年の5月末から6月頭の二日間にわたり行われた、コルトレーンのインパルス!最初のスタジオ・セッション「アフリカ/ブラス」の後のコルトレーンの活動記録は、資料07によれば次の通りである。

6月13日から18日 アバーツ・インターナショナル(ワシントンD.C.)
6月20日から25日 アルジアーズ(クリーブランド)
7月1日 ニューポート・ジャズ祭
*7月11日から23日 ヴィレッジ・ゲイト
*7月24日から29日 ショウボート(フィラデルフィア)
8月1日から6日 マイナー・キー(デトロイト)
*8月8日から9月3日 ヴィレッジ・ゲイト
8月25日 ランダルズ・アイランド・ジャズフェスティヴァル
*9月12日から10月1日 ジャズ・ワークショップ(サン・フランシスコ)
*9月22日 モントレー・ジャズ・フェスティヴァル
*10月3日から11日 クラブ・ルイナイサンス(ロス・アンゼルス)
*10月16日から21日 ショウボート(フィラデルフィア)
*10月24日から11月5日 ヴィレッジ・ヴァンガード

 *印のライブにはドルフィーが参加しているとのことだ。つまり7月からこのヴィレッジ・ヴァンガードまで、コルトレーンはドルフィーとかなりの回数の演奏を重ねていたのだ。
(資料01)

初収録アルバム

【ついでにフォト】

2010年 みなとみらい

(2021年1月12日掲載、改訂2023年1月26日)