Syeeda’s Song Flute
(John Coltrane)
(7分3秒)
【この曲、この演奏】
妻ネイマの娘であり、コルトレーンも愛していたアントニアに捧げた曲です。コルトレーンのこの曲の演奏記録は、本セッションだけです。
資料09の解説によれば、「ウラに置いたアクセント等リズム面の手の加え方が面白い」とあります。一聴すると娘の可愛らしさからは離れた曲のように感じますが、幼い娘の仕草から思いついたこの曲には、成長期の少女の動きを表しているのかもしれません。
そう考えると、メンバー全員のまとまりあるテンポの取り方が、上潮に乗るかのように盛り上がっていくのが素敵に映る演奏です。コルトレーンのパワフルでいながら憂いも感じさせる演奏と共に、同様のメンバー、特にチェンバースの演奏に聴き入る内容です。
【エピソード、本セッションについて】
一つのアルバム制作に前日との二日間もスタジオを用意する、さらにはその準備の演奏機会(3月26日)も用意するアトランティックの姿勢に、コルトレーンは強い思いを感じたはずだ。
メンバーは前日と同じで、気心知れたメンバー。演奏曲に目を移させば、「Giant Steps」と「Mr. P.C.」という曲と共に、コルトレーンにとって大事な女性への曲が三曲ある。幼少期から一緒に生活していた従姉妹のメアリー、義理の娘のアントニオへ捧げた曲である。
そしてもう一曲が、本セッションの問題点となる。それは当時の妻ネイマに捧げた曲、「Naima」である。この録音が紛失したのであった。このことがアルバム「ジャイアント・ステップス」発売への大きな問題点となっていく。(私見です)
【ついでにフォト】
2010年 ペナン、タイプーサム
(2020年5月30日掲載)