Then I’ll Be Tired Of You
(Harburg – Schwartz)
(9分29秒)
【この曲、この演奏】
この曲も資料14には掲載されておりませんが、ナット・キング・コールやエラなどが取り上げているバラッドです。
コルトレーンの演奏記録は、本セッションだけです。
資料06に、本セッションのワインストックのログ・ブックが掲載されています。それには、最初はこの2曲目を「All Through The Night」と記載しています。また書き直しについては「I’ll Be Tired Of You」と、「Then」を省いて記載しています。
さらに資料06では、この曲は3テイクあるとのことです。最初は途中で中断、2回目が採用された演奏、そして3度目は6分54秒の演奏でその一部が採用された2回目に挿入されているとのことです。ちなみに1回目と3回目は、最終的には消去されたとのことです。
「コルトレーンの郷愁をそそるバラード・プレイが印象的」と資料09にありますが、コルトレーンのみならず、ガーランドもハバードもノスタルジアを感じる演奏です。私の想像ではこの演奏に際してメンバーは、タイトルの「You」を特定の人ではなく、今自分たちが身を置いているショー・ビジネスの世界に置き換えているのではと思いました。自分たちは純粋にジャズを演奏したくこの世界に入ったのだけれど、そこには契約だ何週間拘束だとのことが付き纏い、なかなか思い通りにはいかない、そんな中で純粋にジャズに心寄せている自分を思い返すような演奏に聴こえました。
【エピソード、A.ブルームのインタヴュー、1958/6/15、その16】
(JC=ジョン・コルトレーン、AB=オーガスト・ブルーム)(資料04)
AB マイルスとの前は、つまりレッドとポールとフィリー・ジョーと組む前は、どんなミュージシャンとやっていたんだい? 共演したミュージシャンを挙げてくれる?
JC えっと・・・全員ってことかい?(笑)
AB (笑)もし、お望みなら(笑)。
JC 参ったな、ええと・・・。
AB 一つだけ確かなのは、君が半端じゃない数のミュージシャンと共演してきたってことだ。
JC ああ、そうだな。
AB それも何年にも渡って、人脈を広げてきた。
JC ああ、まあね・・・
AB なら、こうしよう。今から十五年前の1944年頃、君はミュージシャンとしてのキャリアをスタートさせた。
JC ああ。
AB プロとしての最初のギグは、誰と演ったんだい?
JC そうだな・・・自分では、ジョー・ウエッブのインディアナポリスのバンドが、プロとしての最初の仕事だって思っている。四七年(*)のことだった。ブルース・シンガーのビッグ・メイベルがいたバンドだ。このバンドは・・・うまく説明できないが、リズム・アンド・ブルースというか、何でもありのバンドだった(笑)。あれはどういうバンドだったんだろうな。とにかく、あのバンドが最初だった。それから、キング・コラックスとも演った。トランペット奏者の。あとはエディ・ヴィンソン、ディジー、アール・ボステック、ゲイ・クロッシ・・・
AB 誰だい?
JC ゲイ・クロッシーだ。
AB 聞いたことがないな。
JC クリーブランド出身で、小さなバンドを組んでいた。その前はルイ・ジョーダンのバンドに入っていて、彼のバンドは・・・彼のコンボはルイのバンドを手本にしていた。ルイのように歌えてサックスも吹ける。それから、ディジー・メイ率いるヘップキャッツ。
AB それも初耳だ。
JC (聞き取れず、おそらく「たいしたバンドじゃない」と言っている)それに、ジョニー・ホッジス。
【ついでにフォト】
2010年 ペナン、タイプーサム
(2020年3月2日掲載)