It Might As Well Be Spring
(Rodgers – Hammerstein)
(11分34秒)
【この曲、この演奏】
この曲はオスカー・ハーマンスタイン二世とリチャード・ロジャーズのコンビが、珍しく映画のために書いた曲で、1945年のミュージカル映画「ステート・フェア」で使われた曲です。そしてこの曲はアカデミー賞の主題歌賞となり、このコンビの代表曲となりました。(資料14)
この素敵な曲のコルトレーンの演奏記録は本セッションだけです。(資料06)
この曲では主役のアモンズとコルトレーンの、2管での演奏となっています。全員参加で3曲披露した後にリチャードソンとアダムスを入れた3管で「That’s All」を演奏した後の、本セッション5曲目であります。
さて演奏ですが、「まるで心が春のように浮き立っている」との歌詞の通りに、アモンズのテナーによる気持ちと体が温めるバラッド演奏です。ほぼ全編がアモンズの魅力で包まれた演奏ですが、コルトレーンのアルトにも出番があり、出来栄え見事な演奏です。資料09には、「原曲のイメージを崩さずにストレートに唄いあげており、そのスタイルはかつてのアイドルのジョニー・ホッジスに負うところが大きい」とあります。私はこの原曲を大切にするコルトレーンの姿は、このセッション、そしてこの曲でのアモンズの演奏から学び取ったところが大きいと、思っております。
この曲の後にアモンズはリチャードソンと3曲を収録しておりますが、コルトレーンは参加していません。
【エピソード、アルトのコルトレーン】
資料11に次の記述があります。
コルトレーンのアルトのアプローチは、そのテナーのスタイルとはそうは違わない。実際、テナーをそのままずっと高くしていったような感じがしないでもない。彼は奔放に吹きまくっており、時折標的の高音の上をかすめ飛ぶような勢いさえある。
ジャズの歴史家のルイス・ポーターは最近、フィル・シャープの情報に従って、1946年の海軍時代にコルトレーンがひそかにアルトで吹き込んだレコードの所在を突き止めた。これら二つを聴き比べるに、初期の19歳のコルトレーンは、影響的にはジョニー・ホッジスとチャーリー・パーカーの中間にあり、サックスの基礎的な技術とハーモニーを習得している最中であるのに対し、その12年後には、パーカーの影響はほとんどなく、名人級の技術とハーモニーの博学的知識を身につけている。パーカーの死から3年もたっていないというのに、コルトレーンはそのアプローチをメロディとハーモニーの極めて新しい見方へと変えていた。
【ついでにフォト】
2009年 みなとみらい
(2019年11月8日掲載)