2024年7月6日掲載

Miles Davis
In A Silent Way
Columbia原盤
1969年2月録音

 マイルスはアルバム「キリマンジャロの娘」を録音した後にスタジオに入り、新たな取り組みを行いました。具体的には、キーボード奏者を複数人にしたのです。1968年11月11日にはハンコックとコリアを入れてレコーディング、翌日も同様、11月25日にはさらにザヴィヌルを加えキーボードを3人に、そして11月27日にはドラムスをウィアムスからディジョネットに変えてのレコーディングでした。この4日間の取り組みの模様は、後年になりいくつかのパッケージで発売されました。

 この4日間を経てマイルスは、本作品を録音するために、1969年2月18日にコロンビア・スタジオ B に入りまし。メンバーは次のとおりです。

ウェイン・ショーター (ts)
ジョン・マクラフリン (el-g)
ハービー・ハンコック (el-p)
チック・コリア (el-p)
ジョー・ザヴィヌル (org)
デイヴ・ホランド (b)
トニー・ウィリアムス (d)

 収録曲は「Shhh/Peaceful」と「In A Silent Way/It’s About That Time」の2曲で、アルバム「In A Silent Way」は1969年7月30日に発売されました。なお発売当初のアルバム名と曲「Shhh/Peaceful」は、「Mornin’ Fast Train From Memphis To Harlem」でした。

 LPレコードでのA面の「Shhh/Peaceful」は、「ハイ・ハットによる16ビートの繰り返しと、Dのコードだけで演奏されるベースに乗って、各メンバーが即興演奏を繰り広げていく(ウィキペディア)」との演奏です。3人のキーボードが絡み合っている上に乗っかっている雰囲気に浸る、18分です。

 B面の「In A Silent Way/It’s About That Time」は、ザヴィヌル作の曲とマイルス作の曲のメロディとの流れで、さらにテオ・マセロが編集したものです。静かな展開ながら、心の底から熱気を感じる演奏です。

 本アルバムのライナー・ノーツでフランク・グレンが、「本作品は音楽に興味を持つすべての人に新たな方向を示している」と書いています。私にとっての「電気」マイルスの始まりとなる本作品は、まさにフランク・グレンの言葉の通りだと感じました。

 聴くものだけではなく、演奏していたミュージシャンにとっても、「新たな方向」だったのでしょう。ウェイン・ショーターにジョー・ザヴィヌル、チック・コリア、ジョン・マクラフリン、彼らが1970年代のフュージョン旋風の中心となっていきます。