2024年6月8日掲載

Ascenseur pour l’échafaud (original soundtrack)
Fontana原盤
1957年12月録音

 このアルバムは、1958年に公開されたフランス映画「死刑代のエレベーター」の、サウンドトラックです。録音は1957年12月4日にパリで行われ、メンバーは次の通りです。(日付をまたがって深夜までのれコーディング)
マイルス・デイヴィス(tp)
バルネ・ウィラン(ts)
ルネ・ウルトラジュ(p)
ピエール・ミシュロ(b)
ケニー・クラーク(d)

 私が持っているのは、1988年に国内発売されたCDです。そこにはこのレコーディングに至る背景が、マルセル・ロマノ氏とボリス・ヴィアン氏によって書かれています。要約すると次の通りです。

 マルセル・ロマノ氏は、この時期に3週間のマイルス欧州公演をブッキングし、さらにはレコーディング・セッションを捉えた映画を企画していました。しかし欧州公演自体は期待した(商業的な)成功とはならず、また映画の企画も頓挫した。そんな時にこの「死刑台のエレベーター」もサウンド・トラックの話があり、マイルスもこれに興味を持ち、結果としてスケジュールを確保できた状態なので、12月4日のレコーディングとなったとのことです。マイルスは試写を観てから2週間後に、ポスト・パリジャン・スタジオでのレコーディングに臨んだとのことです。

 1988年発売国内盤CDには、さらにマルセル・ロマノ氏とボリス・ヴィアン氏からの、興味深い話が書かれています。

 1988年発売国内盤CDには、18テイクのオリジナル・マスター・テープが「完全」収録されており、その後にオリジナル・サウンドトラックの10曲が収録されています。マイルスたちが演奏したそのものを楽しみ、その後にこの映画の監督ルイ・マルによって仕上げられたサウンドトラックを堪能する内容です。

 もちろんサウンド・トラックだけでも、このスリリングな映画はこの音楽あってのもの、を実感できます。さらにその素材を聴けることで、この1957年12月4日のポスト・パリジャン・スタジオでのレコーディング風景が頭に浮かんできます。

 次への飛躍に向けた準備期間とも言えるマイルスの1957年、その中の重要なアルバムとこれは言えるのでしょう。

 またアメリカではこのサウンドトラックと、1958年5月26日のコルトレーンやビル・エヴァンスが入ってのマイルス・セクステットでの3曲が収録されたアルバム「ジャズ・トラック」が、1959年11月に発売されています。