2022年6月9日掲載

Shirley Horn
You Won’t Forget Me
Verve原盤
1990年6月録音

 歌手でありピアノ奏者でもあるシャーリー・ホーンは、1960年頃からコンスタントにアルバムを制作してきた方です。その彼女が50歳代後半に制作した本作品は、Charles Ables(b) と Steve Williams(d) との演奏を軸にして、曲によって、Miles Davis(tp)、Buck Hill(ts)、Branford Marsalis(ts)、Wynton Marsalis(tp)、そして Toots Thielemans(harmonica, guitar) がゲスト参加しています。

 注目はマイルスの参加でしょう。アルバム名にもなっている曲で、マイルスは演奏しています。

 ほぼピアノと歌のシェーリーさん一人舞台でしっとりと「The Music That Makes Me Dance」、ピアノ・トリオで軽快に「Come Dance With Me」、ウィントンのミュート・トランペットと妖しい気分で「Don’t Let The Sun Catch You Cryin’」、トゥーツ・シールマンズのギターをバックに歌い時にハーモニカが重なる「Beautiful Love」など、趣向を凝らした展開が続きます。シャーリーさんの魅力的にハスキーが加わり、低音がしっかりとでている歌唱を、しっかりと活かしている企画です。

 そして「You Won’t Forget Me」ですが、スローなブルースの最初に、マイルスがミュート・トランペットで一音放っただけで、マイルスの世界になるのは脱帽ものです。ただしそれはシャーリーの持ち味を活かす演奏です。彼女の都会の夜の華やかさと危うさが似合う歌声を、マイルスのトランペットが引き立てて、マイルスもしっかりと自分を出しての7分間を単横できます。

 最後はトリオで「All My Tomorrows」でしっとりと、この素敵なアルバムを締めくくっています。