2021年12月10日掲載

John McLaughlin / Al Di Meola / Paco De Lucia
Fridy Night in San Francisco
Sony原盤
1980年12月録音

 アル・ディメオラ(1954年生まれ)、パコ・デ・ルシア(1947年生まれ)、ジョン・マクラフリン(1942年生まれ)によるこのスーパー・ギター・トリオが活動を始めたのは、1980年のこと。かねてからのディメオラの呼びかけが現実のものとなり、スペイン(パコ)、英国(ジョン)、アメリカ(アル)出身の3人のスーパー・ギタリストが一堂に会するという、前代未聞のコンサート・ツアーが開始された。この情報は日本にも伝わり、まだアルバムが1枚も存在しないのに、話題の沸騰ぶりは凄かった。強力無比なテクニックの3人が揃ってアコースティック・ギターを弾くステージなど、誰も予測できなかったし、ましてやそのステージを想像すれば、ギター・ファンの夢は膨らむばかりだった。(国内版CDにある成田正氏の解説から引用)

 このスーパー・ギター・トリオについて今年になってからSNSで知った私は、「話題の沸騰ぶりは凄かった」との当時には、このトリオに関心を寄せていませんでした。

 まずは生ギターが響きあっていく様子は、自分の愛用オーディオを愛おしく思ってしまうほどに、素晴らしいものです。構成は事前の打ち合わせで決めてあるのでしょうけれど、随所に「これではどうか」と相手にぶつけていき、「それならこれはどうかな」と切り返していく展開には、音楽好きはうなってしまうものです。

 5曲が収録されており、3曲では二人での演奏となっています。曲によって組む相手が異なっており、その意味でも興味が湧く展開です。マクラフリンが左から、ディメオラが右からギターを弾いている「Short Tales of the Black Forest」では、爽やかな風が徐々に怪しくなっていく様子が、客席を楽しませるアドリブと合わさって、素敵なものです。

 私が歓喜した二人での演奏は、冒頭に収録されている、パコ・デ・ルシアが左からアル・ディメオラが右からギターを弾いている「Mediterranean / Rio Ancho」です。

 なんでもこのスパー・ギター・トリオのきっかけは、1977年作のディメオラのアルバムにパコ・デ・ルシアが参加したことだそうです。そしてそこで「Mediterranean」が演奏されていたとのことですので、この二人にはすっかりと馴染んでいたのでしょう。スパニッシュな中でカオスに登っていく二人の演奏には、鳥肌が立つものです。

 3人で演奏している2曲での美しさと爆発が絡み合う演奏も堪能して、聴き終えた1枚です。