2021年8月1日掲載

Third World Love
Songs And Portraits
Anzic原盤
2009年4月録音

 手元の字引によれば portrait には、次の三つの意味があるとのことです。
(主に顔の)肖像画, 写真, ポートレート; 似顔絵
(文字・映像による)描写, 叙述.
生き写し; 典型.

 このアルバム名にあるポートレイトですが、ジャケットを見る限りですと、三つの中の最初の意味となります。しかしながら二つ目、あるいは三つ目の意味もあるのかとも思っています。

 トランペットのアヴィシャイ・コーエン、ピアノのヨナタン・アヴィシャイ、ベースのオメル・アヴィタル、そしてドラムのダニエル・フレードマンからなる、サード・ワールド・ラヴの第四作を、今日は取り上げます。

 2002年録音作品、2005年録音作品、2007年録音作品に続くこの2009年作品ですが、私がネットで調べた限りでは、これ以降に新しい作品は制作されていません。

 人間の内面を、心の底を描く演奏に感心して聴き入りました。イスラエル・ジャズならではのテイストがうっすらとある中で、テクニックとハートを兼ね備えた四人が、バンドでのまとまりを意識しながらここぞという場面で自分を押し出していく演奏内容は、言葉で言い尽くせないものです。

 トラディショナルの「Im Ninalu」、アヴィシャイ・コーエン作の「Songs for a Dying Country」、オメル・アヴィタル作の「The Immigrant’s Anthem (Sad Song)」が、私が特に強くそんなことを感じた演奏でした。

 これぞ現代ジャズの名盤と改めて感じながらも、既に録音から12年が経っています。新作を聴ける日を、心待ちにしています。