2021年6月3日掲載

Anat Cohen Tentet
Happy Song
Anzic原盤
2016年8月録音

Anat Cohen(cl) , Rubin Kodheli(cello), Nadje Noordhuis(tp), Nick Finzer(tb), Owen Broder(bs,cl), James Shipp(vib,per), Vitor Gonçalves(p,acc), Sheryl Bailey(g)
, Tal Mashiach(b) Anthony Pinciotti(ds)、この十人での演奏です。

ディスクユニオンの本盤ページによれば、この作品のポイントは、Oded Lev-Ari がミュージック・ダイレクターとして加わっていることだそうです。アナットとこのオデッドは、Anzic Record の共同設立者とのことです。

参加メンバーの中では、ピアノとアコーディオンで参加しているヴィトール・ゴンサルベスが注目とのことです。リオ・デ・ジャネイロで育った若手の方です。

収録されている8曲に目を移しますと、「Anat’s Doina」という三部構成の曲があります。アナット作のパートに挟まれてトラディショナルの「Der Gasn Nigun」がある、12分の演奏となっているものです。

 スウィング・ジャズの味わい、というよりもディキシーランド・ジャズの響き、これがベースに流れる作品です。聴いていて楽しくなるのが本盤であり、私には映画で見る、我が世を謳歌していた大恐慌前のアメリカの光景が思い浮かびました。

 ただし、どんなに好調な時でもその裏では嫌な流れが潜んでいる、こんな情景が浮かぶ曲があるのも、本盤のポイントでしょう。三部構成の「Anat’s Doina」が、そんな演奏でした。「身投げする人を避けながらタクシーが運転していた」との大恐慌を言い表した台詞が、先日見た古い映画「草原の輝き」にありました。この演奏を聴いていると、そのシーンを思い出しました。

 ドラマ性のある素敵な作品、Oded Lev-Ar のセンスに感心し、内ジャケにあるメンバー全員の笑顔に納得して、本作を聴き終えました。