2020年11月8日掲載

Third World Love Songs
Fresh Sound原盤
2002年7月録音

 あのレゲエのグループとイスラエル・ジャズマンのコラボ!、などとの勘違いはすぐに消え去りましたが、SNSでこの Third World Love というグループを紹介して頂いたときには、そう思ったものでした。

 オマー・アヴィタルとトランペットのアヴィシャイ・コーエン、ドラムにダニエル・フリードマン、そしてピアノのヨナタン・アヴィシャイによるこのグループは、本作録音時の2002年に結成され単発ツアーで終わるはずでしたが、その後も活動を続けております。
本作のジャケは朝焼けor夕焼けの写真で、裏ジャケなどには和かな四人の姿が写っています。

 ウィキペディアによれば、第三世界との分類の仕方には、二つの考えがあるそうです。東西冷戦時代の考えがその一つで、東西どちらにも属さない国(主に発展途上国)と米ソに対して中立的なユーゴスラビアが、第三世界と分類されました。この考えですと、イスラエルは資本主義陣営として第一世界に属するとのことです。
二つ目の分類の考えは毛沢東が提唱したもので、第一世界は超大国である米ソ、第二世界は超大国以外の先進国、それ以外の国々は第三世界となるとのことです。この分類ですと、イスラエルをどこに分類するかは微妙なことになります。

 さて本題に入りますが、このアルバム名が六曲全てを表しているとすると、第三世界からの随分と辛口のメッセージとなります。切なさと嘆き、希望を持ちたち人々の気持ちが、曲と演奏に現れています。四人の好演がこのメッセージを形成しているのですが、敢えて挙げるならばトランペットのアヴィシャイ・コーエンの語り口の強さと濃さの個性が、本作品の良さを決めているなと、私は感じました。

 タイトル曲は、オマー・アヴィタルによるものです。圧巻の演奏です。一度は挫け倒れた青年が起き上がり、再び挑戦することを誓うような場面を思い出します。朝焼けでも夕焼けでも似合う内容です。アヴィシャイの泣きのトランペット、ベースとドラムの切れ味の良さ、ピアノの心を打つ演奏、どれにも感心しながら、私はこの演奏に惚れてしまいました。