2020年10月10日掲載

Yuval Cohen
Song Without Words
Anzic原盤
2009年8月録音

 コーエン三兄妹の最後に、長男であるソプラノ・サックス奏者のユヴァル・コーエンの作品を取り上げます。まずはWikipediaから簡単に彼を紹介します。1973年にテルアビブで生まれた彼は、1991年から1993年までイスラエル軍のビッグバンドで演奏し、その後にアメリカに移り、バークリー音楽院とマンハッタン音楽院で学びました。彼の最初の作品は2007年発売の「Freedom」、2010年に本作品を発表しています。2014年にはダウンビート誌での賞を受け、そこでピアニストの浜村昌子とデュオ演奏をしたとのことです。また同姓同名のピアニストがいますが、彼とは全く関係ないとのことです。

 アナットさん、アヴィシャイさんと妹と弟は活発なレコーディング活動を行っていますが、長男のユヴァルさんは控え目なレコーディング活動となっています。

 さて本作ですが、イスラエル出身ピアニストで今やジャズ界の主要ピアニストといえる、シャイ・マエストロ(1987年生まれ)とのデュオ作品です。

 優しく誠実なユヴァルさんのソプラノ・サックスの奏でを、シャイさんのピアノが巧みに盛り上げ、時にはピアノもしっかりと自己主張する、そんな中身です。ユヴァル作のタイトル曲、シャイ作の「Nehama」と、冒頭の二曲でそんな世界を心地よく味わえます。そして続く六曲でもその姿なのですが、50分を聴き通すには厳しい面も感じます。スタンダードやコルトレーンの曲などのアルバム構成ですが、そんな気になります。

 そんなことを感じながら、ジャケを開いてみれば、左側に誠実なお二人の写真、そして右側にユヴァルさんのコメントがあり、そこに「The emphasis in this album is on melody, and a simple but honest dialogue between two friends」とあります。「このアルバムで重要なのは、メロディーと、2人の友だちでの派手さはないが偽りのない対話です」との一文を読み、この作品の聴き方が分かった気持ちになりました。
 CDの機能を使い、シャッフルで再生し、15分ほどの世界を楽しむのが良いでしょう。そすると「派手さはないが偽りのない対話」を心から楽しめます。