2020年10月8日掲載

Anat Cohen
Notes From The Village
Anzic原盤
2008年5月録音

 コーエンさん兄妹のアナットさんは生年月日非公表なのですが、バークリーには1996年に入学したようです。プロとしての本格活動は1999年からのようで、今までにリーダー作は6枚発表しています。そして先の 3 Cohens を含め、いろんな方々との作品も発表しています。そんな彼女の活動は高く評価されており、2007年にはジャズジャーナリスト協会から「新進気鋭のアーティスト」と「年間最優秀クラリネット奏者」を受賞したのを皮切りに、今まで絶え間なくいろんな賞を受けています。そして2017年にはアカデミー賞の二つの部門でノミネートされtました。(以上はWikipediaからの情報)

 Jason Lindner(p, Rhodes), Omer Avital(b), Daniel Freedman(d, per), そして2曲だけGilad Hekselman(g)が参加している本作は、2008年に発表された彼女の三作目であります。

 主役のアナットさんは、クラリネット、テナー&ソプラノ・サックス、そしてバス・クラリネットを、本作では使用しています。そういえば彼女はジャズジャーナリスト協会から「年間最優秀マルチリード奏者賞」を何度も受賞しています。

 アナットさんの魅力は、しなやかさだと感じました。曲づくり、アレンジ、そして演奏にそのしなやかさが様々な色を添えています。

 「ワシントン広場の夜は更けて」という曲があります。ヴィレッジ・ストンパーズが1963年に放ったヒット曲です。インストなのですが、日本では漣健児が詩をつけて、何人もの方がこの曲をカバーしました。私は憂歌団のアルバム「知ってるかい!?」で聴いていた曲ですが、夜更の広場の風と月明かりに落ち葉、そこから香るものを感じ、印象に残っている曲です。

 アナット作の「Washington Square Park」との曲が一曲目にあります。かつてこの公園はヒッピーやゴロツキの溜まり場となり治安が悪化していたけど、今世紀に入り高級化が進み安全な公園になったとのことです(ウィキペディアより)。アナットさんの曲、そして演奏には、その端境期の公園の昼間の様子が描かれているようです。さらには芸術を夢見る若者のパフォーマンスもあり、明るく混沌としているの演奏となっています。まさに彼女の曲づくり、アレンジ、そして演奏のしなやかさが発揮されたものになっています。私は「ワシントン広場の夜は更けて」を思い出しながら、アナットさんのとの対比を楽しんで聴きました。

 他にも良いものが並んでいる本作品、そこにあるしなやかさにイスラエルらしさが微かに、そして絶妙に加わっているものです。