2020年11月10日掲載

SATLAH
SATLAH
TZADIK原盤
1999年録音

 ダニエル・ザミールがリーダーを務めるSATLAHというバンドの、最初の作品です。Shanir Ezra Blumenkranz(b), Kevin Zubek(d)がメンバーの三人組で、このレーベルの主宰者であるジョン・ゾーン(as)がゲスト参加しています。なおザミールは Danny Zamir とクレジットされています。

 このバンドで今までに計3作品を発表しており、「今日の1枚」で Daniel Zamir & Satlah として取り上げた「Children Of Israel」(2018年10月5日掲載)が、三作目になるようです。
この「SATLAH」について、ブックレットにザミールの説明があります。

 どの言語にもない「SATLAH」という言葉ですが、イスラエルでスラングとして「歓喜、リラックス、美」などの意味で使われています。音楽を想像していく上で、重要なものと言えます。この最初のアルバムにある11曲は、そんな「SATLAH」の魅力が詰まったものです。

 アルトとソプラノを吹くザミール、近頃はソプラノ・サックスに集中しているザミールですが、この1999年の演奏ではアルト・サックスだけの演奏となっています。

 イスラム教とユダヤ教は違いますが、私はその違いを明確に述べられません。これにキリスト教を入れて三つの宗教は対立し、敵対してきました。

 私はイスラム教が国の宗教であるマレーシアに、合わせて七年ほど住んでいました。朝のシャワーの時間にはアザーンが聞こえる環境にいました。また宗教に音楽はつきものであり、私はその音楽に親しみを感じていました。

 このSATLAHの音楽を聴くと、そしてイスラエル出身ジャズマンの中でも「伝統的なジューイッシュ音楽、クレズマー、ハシディック」色を最も前面に出すザミールの演奏を聴くと、マレーシア駐在時代を思い出してしまいます。イスラム教とユダヤ教は違いますが、でもそう感じるところが私にはありました。

 さて本作品ですが、そんな自分の中にある親しみが実に強く出ている作品です。ザミールがベースとドラムでのトリオで臨んだ演奏、そしてそこにジョン・ゾーンが加わって演奏、11の曲の中で輝いています。