2024年7月5日掲載

Miles Davis
Filles de Kilimanjaro
Columbia原盤
1968年6月録音

 アルバム名はフランス語、日本語訳はこのアルバムの邦題の通りに「キリマンジャロの娘たち」です。このアルバム名には何かの謂れがあるのか、民間伝承の物語があるのか、などと思いネットで調べましたが、ヒットするのはこのマイルスのアルバムだけであります。

 「Kilimanjaro」とはタンザニアにある休火山で、アフリカで最も高い山です。この山自体に何かの思いがあり、マイルスは名付けたとのことなのでしょう。


 さてこのアルバムは、電気マイルスへ進み始めた第2作、との紹介が一般的です。「第1」とされているのは「マイルス・イン・ザ・スカイ」で1968年1月と5月の録音で、4曲が収録されており、ハンコックとカーターが「電気」で演奏したのは1曲(Stuff)だけです。また電気ギターでジョージ・ベンソンが1曲(Paraphernalia)に参加しています。

 そして今日取り上げる「第2作」は、部分「電気」作品ともとれるし、「電気」作品とも言えるものです。

1968年6月19〜21日
ウェイン・ショーター (ts)
ハービー・ハンコック (el-p)
ロン・カーター (el-b)
トニー・ウィリアムス (d)

1968年9月24日
ウェイン・ショーター (ts)
チック・コリア (el-p)
デイヴ・ホランド (b)
トニー・ウィリアムス (d)

 LPレコードでのA面の最初の「Frelon Brun」での躍動感、B面の最初の「Filles de Kilimanjaro」での楽しげに揺らいでいる雰囲気、私はこれが気に入っています。「電気」云々ではなく8ビートの世界へ踏み込んだマイルス、と言える時期の作品なのでしょう。

 最後に控えている曲は、チック・コリアとデイヴ・ホランドが入って9月24日に録音された「Mademoiselle Mabry」です。この演奏にこれから本格的にエレクトリックな世界に入っていくマイルスの姿、マイルス・バンドの方向を感じます。