2024年1月1日掲載

Toshiko Akiyoshi – Lew Tabackin Big Band
Farewell
Baystate原盤
1980年1月録音

 ディスクユニオン関内店中古CD半額セールで、290円で購入した作品です。

 「ダウン・ビート誌連続 2年首位の栄冠に輝くトシコ=タバキン・バンドの新メンバーによる新鮮なサウンド」
 このように1989年発売の国内盤CDに書かれている作品です。その盤の封入解説は、1980年にLPレコードで発売された際に、瀬川昌久氏が書かれたものです。そこから少し引用します。

 ピアニスト兼作編曲家秋吉敏子と夫君のルー・タバキンがリーダーとなり、1973年にリハーサル・バンドとして発足したこのビッグ・バンドは、第1作の「孤軍」以来活動を続け、本作品は10作目となる。その間に数々の栄誉を得て、数度の来日公演も行ってきた。1979年の初のヨーロッパ楽旅は大成功を収めた。そのヨーロッパ楽旅の前に、長い間移動がなかったサイドメンに相当の移動があった。本作品はそんな新メンバーにスポットが当たるよう配慮が加えられている。

 厳しい音楽業界でビッグ・バンドで活動し続け、そして新たなメンバーを加えてさらに進んでいこうという作品に「フェアウェル」との名前は、どうしてなのかと思いました。全てが秋吉氏の作編曲である5曲の中に、「フェアウェル(トゥ・ミンガス)」との曲がありました。秋吉氏がお世話になってきたミンガス、秋吉氏が敬愛するミンガスが、この録音の1年前に亡くなっていました。

 アンサンブルの芳醇さと切れ味の鋭さが、私がこのビック・バンドに感じる魅力です。その魅力が満載の中で4曲の演奏が進み、最後は10分間の「フェアウェル(トゥ・ミンガス)」となります。静かな流れで進み、ソロはルーのテナーから秋吉のピアノへと続きます。ルーの哀悼の誠がテナー・サックスに込められ、ミンガスから孤高の精神を受け継いだ秋吉のピアノの一音一音に響いています。

 このビッグ・バンドの魅力を楽しみながら、ジャケットを眺めながら聴いた最後の曲から改めてジャズ界の巨人の功績を思い浮かべながら、本作を聴き終えました。